アンチワークは終わってしまったのか?
ここ数年で、「アンチワーク」や「大退職時代」、「静かな退職」など、これまでの働き方や労働そのもに反感を示す社会運動が注目を集めていました。しかし、最近はそれらの言葉をあまり聞かなくなってきたのではないでしょうか。
2022年の末あたりから、米国の大量解雇や高いインフレ率など、労働者には厳しい状況が続いています。さらに、定着したと思われたリモートワークですが、各国でオフィスへの出勤を義務付ける企業が増えています。
では、熱狂的な支持を集めたアンチワーク・ムーブメントは、景気の後退やパンデミックの終焉(に伴う補助金の減少等)によって、終わってしまったのでしょうか?それとも、また違ったものに進化したのでしょうか?
この記事では、アンチワークが社会に与えた影響について考察してみます。
目次
アンチワークとは?
アンチワークとは、元々はインターネット掲示板のredditに立てられたスレの名前です。
労働に対する反感や、労働から解放されるための方法など、「反労働」的な投稿が多いことで有名です(2023年現在も、購読者が240万人います)。パンデミックの渦中で爆発的に支持者を集め、一世を風靡する(ネット)社会運動にまで発展しました。
アンチワークが取り扱うトピックは幅広く、労働者の権利向上、企業の違法・虐待行為の暴露、現在勤めている職場の問題提起から、資本主義の廃止やベーシック・インカム、労働の終焉などが議論されていました。実際にredditスレの管理者達も、アンチワークで成し遂げたいことに関して、意見が分かれていたそうです。
色んなテーマを抱えているアンチワークですが、総じて言うと、「労働なんてクソだ」という考えが根本にあります。
アンチワークによって、労働に対する不満が表現しやすくなった
アンチワークが現代社会に及ぼした影響の一つが、労働に対する不満を公の場で表現しやすくなったことです。
特に最近は、SNS上で多くのアンチワーク的な投稿が支持を集めています。比較的若い世代が中心となり、仕事に対する幻滅感や批判を表現するミームや辛辣なコメントが大量に投稿されています。また、仕事に対する燃え尽きや疲労感、メンタルヘルスの悪化など、パーソナルな内容も多く共有されるようになりました。
社会活動家の中には、労働者の自己表現が活発になることで、労働組合や法律の改正が進むことを期待している人々もいるようです。
アンチワークなどの反労働的なムーブメントが原因かどうかは分かりませんが、大手企業内で労働組合を結成する動きも盛り上がっています。
Source: r/WorkReform
とはいえ、労働は人生の一部であり続ける(可能性が高い)
アンチワークから派生して、直近では職務上求められる必要最低限の仕事だけを行う「静かな退職」もブームとなりました。しかし、発起人が再びフルタイムで働き始めるというニュースも出ていたように、静かな退職はあまり長続きしませんでした。
いずれにせよ、仕事は私たちの人生の一部であり続ける可能性は高そうです。
今回のパンデミックで体験したように、テクノロジーや社会情勢との相互作用で、私たちの仕事に対する考え方や働き方は大きく変わります。その変化に伴い、仕事の役割やあるべき姿に関する議論は進化(ないし退化)していくのではないでしょうか。
Source:
From ‘antiwork’ to ‘act your wage’ — more disgruntled workers flocked to Reddit in 2022
Gen Z does not dream of labor
OK, WTF Is Going On With the Antiwork Subreddit and the Fox News Ambush?
アンチワークって何?働かないことを肯定する社会は来るのか。