マノスフィアをなるべく客観的に解説してみます

「マノスフィア」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、今後日本でも耳にする機会が増えるかもしれません。

マノスフィアとは元々、男性の問題や自己啓発に焦点を当てた、オンラインコミュニティやウェブサイトの集合体です。

マノスフィアを、男性が抱える人間関係・キャリア・メンタルヘルスなど、様々な問題に対してサポートを提供するポジティブなムーブメントと捉える人もいます。

一方で、マノスフィアを有害な男らしさ・女性蔑視・過激な意見の温床とみなす人々もいます。例えば、MANTRapという調査団体のメンバーはマノスフィアを、「女性の地位向上に反対し、反フェミニストや性差別的な信念を推進するオンライン男性コミュニティのネットワーク」だと捉えています。

また、マノスフィアは「社会におけるあらゆる問題の原因を女性やフェミニストに求めており、マノスフィアの多くは、女性や少女に対する恨み、あるいは憎しみを助長する」と述べています。

気をつけなればいけないのは、マノスフィア内の全てのグループが同じ理念や価値観を持っているわけではない点です。

筋トレの重要性やモテ方に重点を置くグループもいれば、より過激（女性蔑視的）な考えを主張する人々もいます。そのため、マノスフィアを理解するためには、共通する考え方とともに、その多様性にも注意を払う必要があります。

マノスフィアに共通する考え方

マノスフィアには様々なグループがありますが、それらに共通しているのは「男性が女性中心社会の中で虐げられている」という考え方かもしれません（もちろん、これは事実無根です）。

マノスフィア界隈で頻繁に出てくる言葉が「レッドピル」です。これは映画「マトリックス」で、主人公が世界の真実を求めるか、安定した生活が保障されている嘘の世界に戻るかの選択を迫られるシーンが元になっています。世界の真実を求めた主人公は「レッドピル」を飲み込んで、マトリックスの本当の姿を目にすることになります。

同じように、マノスフィアでは「レッドピル」を飲んだ男が、「男性が組織的な権力や特権を持っていない」ということに気づくと考えられています。さらに、男性は「社会的・経済的・性的に女性の権力の支配下にある」という真実に目覚めるとされています。

逆に、「ブルーピル」を飲んでいるその他大勢の男性は、大手メディアやフェミニストの物語を受け入れ、世界の真実を知らないという風に捉えています。

もちろん程度の差はありますが、マノスフィアの参加者は「男性こそがフェミニスト組織やフェミニスト運動の真の犠牲者である」と感じているようです。（男性を標的にした）架空の陰謀に対抗するために結束した「女性嫌悪者」たちの集まりだと捉える人々もいます。

マノスフィアの4大グループ

マノスフィアには多様な考え方や行動方針があります。この記事では、代表的なものを4つ紹介します。

男性の権利活動家（MRA）

男性のためになるような政治的変化を提唱しているグループ。しかし、彼らの活動の多くは、フェミニストや他の女性公人に対する嫌がらせや罵倒から成っています。

我が道を歩く男性（MGTOW）

女性は有害であるため、男性は女性を完全に避けるべきであると主張するグループ。MGTOWの中には女性と付き合うが、結婚のような真剣なことは避ける人もいれば、女性と友達になることさえしない人もいます。

ナンパ師（PUAs）

女性にモテるために男性に口説き文句を教えるグループ。これらのテクニックの多くは、女性を侮辱したり（ネグレクト）、同意を無視したりするなど、女性を不当に扱うことに特化している節があります。

独身主義者（インセル）

女性との関係を持つ権利があると信じているが、パートナーを見つけることができないグループ。このグループは、複数の極端なテロ行為や殺人まで起こしています。

空前のマノスフィアブーム

マノスフィアは世界的に潜在的な支持者が多い可能性があります。

YoutubeやTikTokなどのSNSを見渡すと、男性優位や女性蔑視的な考え方を主張するタレントやインフルエンサーが無数といることに気付かされます。また、最近ではアンドリュー・テイト氏や「アルファ・マン」のポッドキャスターなどが次々と主要なSNSから追放されているにも関わらず、若者から幅広く支持されています。

日本でも、徐々にマノスフィア的な価値観を持つコンテンツが、SNSで支持を集め始めているようです。

冒頭でも書きましたが、マノスフィアは非常に多彩なグループの集まりです。しかし、その根底には「陰謀論的な女性蔑視感」が存在していることもしばしばあります。

そのため、マノスフィアから情報を取り入れる際は注意が必要かもしれません。最初は自己啓発のつもりが、気づくと「根拠の無いヘイト」に毒されてしまう可能性も見過ごせません。