未来を予測することは可能?! Future Studiesってどんな学問?
VUCAの時代と言われているように、現代は未来を予測することが非常に難しいと思われています。
心理学者のフィリップ・テトロックは、いわゆる「専門家」と呼ばれる方々の未来予測精度は、例えるなら「チンパンジーのダーツ投げ」と同等レベルだと発言したこともありました。未来予測はそれほどまでに難しいと考えられていますが、グローバルな可能性やリスクとうまく付き合うために、未来を真剣に考察する研究分野があります。それが「Future Studies(未来学)」です。
先行きが不透明な時代だからこそ、Future Studies から何かしら、未来に備えるためのヒントが得られるかもしれません。
目次
Future Studies とは?
Future Studies とは、起こり得る未来や理想的なシナリオの実現方法などを総合的に研究する学問です。
以前は未来予測することに重点が置かれておりましたが、現在は「可能性のあるシナリオ」を複数同時に模索することが重要視されているみたいです。言い方を換えると、未来に起こり得ることを複数想定して、私たちが取れる対策や準備を考えるための学問だと言えそうです。また、不確実性と複雑性が満載の未来を捉えるために、科学や技術だけではなく、歴史や社会学などの分野も総合的に用いることも大きな特色です。
Interdisciplinary Studies(複数の学問領域を横断する研究)の大切さが再認識されつつありますが、Future Studies はまさにその代表例だと言えます。各国の政府やグローバル企業のリーダーなども Future Studies に注目しており、UAE(アラブ首長国連邦)は Ministry for the Future (未来省)を設置しています。
参照:What is ‘futures studies’ and how can it help us improve our world?
Future Studies の研究方針とは?
未来を研究するためには様々なアプローチがありそうですが、ここでは WFSF(World Futures Studies Federation)が紹介している5つの方法論を紹介します。WFSF とは、未来に特化した研究機関などが集まっている、ユネスコと国連のパートナーNGOです(日本にも支部があります)。
Empirical-Positivist Tradition
1960年代から用いられているアメリカ発祥のアプローチです。トレンド分析や予測を重点的に行います。名前から察すると、実際の出来事をベース(実証的)に未来を解釈するアプローチ、というイメージでしょうか。
Critical-Normative Tradition
前述したアメリカ発祥のアプローチがあまりにも実証的であるという批判的な態度がベースにあります。Normative という言葉から察するに、未来を検討するための規範や標準的なモデルを探るために生まれたアプローチなのかもしれません。ヨーロッパ発祥で、1970年代ごろに WFSF の前身を形作った考え方です。
Cultural-Interpretive Tradition
WFSF メンバーが中心的に模索したアプローチです。西欧諸国以外の事象も研究対象に入れることで、より深く文明や地球の未来を考察することを目指しました。
Empowerment Activist
1990年代にヨーロッパで盛んになり、オーストラリアでも取り入られたアプローチです。実際に行動したり、人々のエンパワーメントを重視しているアプローチです。
Integral/Transdisciplinary
現在最も注目されているアプローチです。複数領域の分野を総合的に用います。地球単位の未来考察を、様々な視点から可能にしてくれることが期待されています。
もちろん上記5つ以外にも、Future Studiesのアプローチは数多くありますし、いくつかのアプローチを複合的に用いる手法もあるようです。ここでは、未来を考察する上での大まかな方法があるということを知っていただければと思います。
Future Studies を学ぶ意義とは?
先行きが不透明な時代だからこそ、私たちが Future Studies から学ぶ意義は大きいと考えています。ここでは大きく分けて、2つのメリットを紹介したいと思います。
複雑なことを考察するためのトレーニングとなる
Future Studies では、長いスパンで未来を捉えます。そのため、必然的に様々な分野の知識や学問を複合することが大切になってきます。また、複雑な事象を様々な角度から検討することが求められます。
Future Studies は人類や地球規模の問題を扱うイメージがありますが、実は私たちも、日々複雑化している社会を生きているという意味では、同じような態度や思考方法が求められているかもしれません。
人生100年時代や学び直しなどの言葉をよく耳にしますが、未来への備えや適応力を養うためには、Future Studies から学べることは多いのではないでしょうか。
大きなテーマと向き合うきっかけとなる
日々の生活や人間関係などで忙しく、地球の環境問題や50年後の世界などについて考える時間はなかなか持つことは難しいと思います。しかし、未来に起こり得ることは確実に私たちに影響がありますし、逆に言うと、これからの行動が未来に影響を与えているとも言えます。
そのため、Future Studies などで取り扱われているテーマに興味・関心を持つことが、自分自身の人生を長期的に見るきっかけとなったり、早い段階から備えたり、理想を描いたりすることができる可能性があります。