ポルノとドーパミンの関係。ポルノ中毒とはどういう状態?
アメリカ心理学会(APA)によると、ポルノ中毒は本当の依存症としてはまだ認められていません。しかし、ポルノを身過ぎることによって、日常生活や人間関係、メンタルヘルスに悪影響が及ぶと考えている人々が増えています。また、ポルノに関する科学的な研究も増えてきており、同様にポルノのネガティヴな影響が判明しつつあるようです。
現代は、性的なコンテンツであふれかえっており、いつでもポルノにアクセスできる時代だと言えます。
現に2019年のデータによると、PornHub(世界有数のポルノサイト)には1日平均1億1500万件のアクセスがあったそうです。また、英国ではパンデミックの間、ポルノ中毒のセラピーを必要とする人々が3倍(36,000人)に拡大しました。
ポルノに強力な中毒性がある理由の一つが、その視聴が大量のドーパミンを放出させるからです。さらに、比較的安価で、どこからでも手に入れることができる点も、中毒性を高めている大きな要因です。すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、現代のポルノは「デジタル・ドラッグ」と呼んでも差し支えないと思います。
この記事では、ポルノが脳に影響する仕組みや、ポルノ中毒についてご紹介します。
目次
ポルノに中毒性はあるの?
この記事を書いている時点では、ポルノはアメリカ心理学会やDSM-5(精神疾患の診断統計マニュアル)からはアルコールや薬物と同じように、精神衛生上の問題として認められていません。なぜならば、多くの専門家は、ポルノを見ることが中毒につながらないと考えているからです。
しかし、精神疾患や依存症に対する理解は、常に変化しているのも事実です。
例えば、今では幅広く認知されている「ギャンブル依存症」は、2013年にようやくアルコールや薬物依存と同じカテゴリーに分類されるようになりました。また、「インターネットゲーム障害(依存症)」も、2019年にWHOによって公式な行動障害として認められました。
ポルノは脳の快感回路を活性化させますが、アルコールや薬物と同じように脳の科学的な性質を変えるわけではないことが知られています。だからと言って、ポルノに中毒性がないとは言えません。
Source: Porn Addiction: Causes, Signs, Symptoms, & Recovery
一例ですが、ポルノ使用者の9%が、ポルノの使用をやめようとして失敗したことがあるそうです。また、ある調査では、アメリカの家庭のほぼ半数が、ポルノの使用が家庭内の問題であると回答しています。
では、ポルノを見ると、私たちの脳はどのように反応するのでしょうか?
脳はポルノをご褒美だと認識する?
脳の中には、「報酬中枢」と呼ばれる領域があります。
この領域では、ドーパミンなどの化学物質が放出(=報酬)されることで、私たちが「生存するために望ましい行動」を優先的に行うようになります。
一般的にドーパミンは「快楽」化学物質として知られています。ドーパミンは、特定の行動と「報酬」との間に関連性を生み出します。例えば、運動や食事、セックスなどは、脳の「報酬」系の反応を誘発します。
食事などの日常的な「報酬」は、脳の欲求が満たされるとドーパミンの放出が止まるようになっています。
しかし近年、ポルノの場合は反応が異なることが分かってきました。ポルノの場合、中毒性が高い薬物と同じように、放出されるドーパミンの量が増加し続けるようです。
Source: Pornography Addiction: Science Fact or Science Fiction?
やがて、脳は膨大なドーパミンに対して「耐性」を作ります。そのため、以前と同じレベルの快感を得るためには、より多くの、より過激なポルノが必要になってきます。
この一連の流れによって、ますますポルノの使用を止めづらくなるのです。
脳の「報酬系」は、本来ならば生存に必要な行動を取るために存在しています。しかし、どうやらポルノはその仕組みをハイジャックしてしまうようです。
過剰なポルノが判断力を低下させる
報酬系の乗っ取りに加えて、ポルノは脳の判断能力を低下させる可能性があることも判明しています。
通常、私たちの脳は「前頭前野」という部分のおかげで欲求にブレーキをかけることができます。しかし、ポルノを常用的に使用している人の多くが、ポルノ中毒のリスクを理解したり、ポルノを使用する衝動を抑えるのに苦労しているようです。
この判断能力の低下は「前頭葉機能低下(Hypofrontality)」と呼ばれています。その名の通り、前頭葉(前頭前野)の機能が低下している様を表しています。
ポルノを見始めた当初は、さらなる欲求を我慢できるかもしれません。
しかし、繰り返し見ていうるうちに、脳にとってポルノの価値がどんどん大きくなり、長期的な利益を犠牲にしてでも、ポルノを手に入れるべきだと脳が判断するようになると考えられています。
ポルノの使用は絶対悪なのか
2023年現在、ポルノは密接に社会に組み込まれています。映画やアニメ、SNSを見渡しても、性的なコンテンツを避けるのは非常に難しいのが現状です。
一方で、正式にポルノの強力な中毒性が認められるには、まだしばらく時間がかかるかもしれません。
ポルノに触れる際は、私たちの脳への作用方法やドーパミンの仕組みを念頭に置きながら、うまく付き合っていく必要がありそうです。
Source:
Experts Seem To Disagree On Whether Or Not Porn Addiction Is “Real”
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Pornography Addiction: Science Fact or Science Fiction?
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