人間はもはや現実を生きていない?!その虚無感はハイパーリアリティが原因かも
読み返してみると、本記事のタイトルは少し陰謀論っぽい感じがしますね。しかし、中身は全然違いますのでご安心ください。
Hyperreality(ハイパーリアリティ)とは、私たちが現実世界ではなく、現実の「シミュレーション」を生きている様を表す言葉です。
この一文で、映画「マトリクス」を思い出した方もいるかもしれません。実はマトリクスでは、ハイパーリアリティの概念が重要な役割を担っています。
ハイパーリアリティという言葉は、フランスの哲学者、ボードリヤールが提唱したアイデアです。1981年に発表された「Simulacra and Simulation」という本(マトリクスにも登場します)で、ボードリヤールはハイパーリアリティを「起源なき現実のモデルによる生成」と定義しました。
少々難しい表現に聞こえますが、シンプルに言うと私たちの現実世界が、メディアやテクノロジーなどが作り出す「シミュレーション」に置き換えられているという概念です。
例えば、私たちの現実の大半は直接的な体験ではなく、メディアが報道するニュースなどで形作られているはずです。
メディアのニュースは、現実世界をそのまま映し出しているわけではなく、情報が切り取られたり、解釈された後に人々に届けられています。そのため、ニュースは現実の「シミュレーション」だと考えることができます。
私たちは毎日大量の時間を、テレビやスマホ、パソコンのスクリーン上で過ごしています。その結果、日々膨大な「シミュレーション」に触れることになり、必然的に、私たちの現実の大部分が「シミュレーション」で構成されるようになります。
ボードリヤールは、この「シミュレーション」があまりにもリアルで、どこにでも存在しているため、もはや人間の現実はシミュレーションによって形作られていると考えていました。
例えばSNSなどは、典型的なハイパーリアリティです。虚飾された写真や動画で溢れている空間ではありますが、私たちはSNSを本当の世界と混同しがちです。
広告やブランドなども、ハイパーリアリティの主要なプレイヤーです。
彼らが生み出すイメージやシンボルは、全て何かのシミュレーションが元になっており、それらに重ねるように無限にシミューレーションを作り出します。よって、ハイパーリアリティは「商品とイメージの大量生産」が永遠に続く無限地獄だと捉えることも可能です。
この無限システムは、生産者側にとって大きなメリットがあります。なぜなら、現実とシミュレーションの区別がつかなくなった消費者は、本当に必要な商品と、必要性が捏造された商品の違いが分からなくなるからです。そして、消費者は広告によって必要だと思い込まされた商品を永遠に買い続けることになります。
このような「洗脳」が起きやすいハイパーリアリティでは、多くの人々が「シミュレーションを作り出す側=メディアや企業」に「コントロール」されていると言えます。
このコントロールは、人々から自由意志や批判的な思考を奪います。
また、本質的な意味が存在しない世界は、虚無感を作り出します。その結果、マトリクスの世界のように人々は自由を失い、エネルギーを搾取され、漠然とした悪夢の中を生きているような感覚になります。
では、どうしたら今の現状から少しでも自由に近づけるのでしょうか?
その第一歩は、各々が自分にとっての「レッドピル」を飲み込むところから始まるのかもしれません。
もし古代ギリシャの哲学者が現代に転生してきたら、こう言ってくれるだろう。
「自己啓発の先には何もないかもしれないが、それでも格安ドーパミンのつかの間の快楽がもたらす破壊よりは、はるかに大きな報酬がある。」
— metazaru🪬 (@metazaru99) January 9, 2023
Source:
Welcome To Hyperreality: Where The Physical And Virtual Worlds Converge
The Matrix as Baudrillard’s hyperreality
Welcome to the Desert of the Red Pill
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