思った以上に「情報教育」は、自由に生きるために大切かもしれない。

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IT化による急速な社会変化に適応するために、「情報教育」の重要性を耳にする機会が増えました。そんな中、2024年度実施の国立大学入試に「情報」を必須科目として追加するというニュースが報道されました。いよいよ「情報」は大学受験でも必要とされる教養となるようです。確かに、プログラミング等のITスキルの需要の高まりを考えると、義務教育の課程で「情報教育」を取り入れることは必須に思えますよね。

一方、そんな世間の盛り上がりとは裏腹に、こんな意見をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

・情報の勉強が必要なのは、エンジニアなどの技術職だけではないの?
・IT業界で働く気がないなら、学ばなくてもいいのでは?
・仕事で使わなさそうだし、これからも使う予定がない。

これらの意見はそれぞれ違う立場から出ているように見えますが、一つの共通点があります。それは、教養としての「情報教育」が自分の人生とは無関係である、という考えです。もちろん、何が大切かの取捨選択は、各人が自由に行った方が良いとは思います。また、それらの価値観は尊重されるべきです。

それを踏まえた上での私たち「メタザル」の意見は、「情報に対する教養は、自分の夢や願望に近づくための大切なツールの一つ」です。少し話が大きくなりすぎたような気がしますが、ご安心ください。本日は、なぜ「情報教育」と自分なりに向き合った方がいいのか、についてお送りします。

目次

情報とは何だろうか

私たちは「情報」という言葉を日常的に使っておりますが、具体的な定義は答えられない場合が多いのではないでしょうか。ここでは一旦、「情報」の定義を確認してみましょう。

情報とは、簡単にいえば、「伝えられる内容」のことである。主に「伝達」という行為においてやりとりされる、事実、知識、データ、合図(信号)、等々、あるいは、その事実や知識を伝達するという行為そのもの。あるいは、「しらせ」(知らせ・報せ)。
引用元:情報

合わせて、語源も確認しておきましょう。

情報は英語で「information」ですが、元々は人に知らせるという意味の「to inform」を指す言葉でした。また、「inform」はラテン語で”心や精神に形を与える”という意味の「informare」から来ております。「informare」には、”伝える、教育する、訓練する”という意味もあります。

語源を踏まえると、情報の定義がイメージしやすくなった気がしますよね。もちろん、学問的な分野によって定義は変わりますが、「情報」とは「伝えることが可能な知識や、知識そのもの」といった捉え方ができそうです。

そう考えると、私たちは日々「情報」に囲まれて暮らしています。むしろ、「情報」が無いものは何一つ持っていないのではないしょうか? 言い方を変えると、私たちは「情報」を通してこの世界を感じていますし、過去の振り返りや未来への意思決定を行なっております(ガブリエルの存在論も、この感覚に近いかもしれません)。

一方、それだけ重要な世界の要素であるにも関わらず、私たちは情報の中身をイマイチ把握しておらず、何だか無条件に受け入れてしまっているように思います。そんなフワッとした存在と向き合うものが、「情報教育」です。

参照:高校生に伝えたい本当の情報科学

情報技術が社会を大きく変える

身の回りのあらゆるところに存在している「情報」ですが、近年は「IT革命」によってその処理能力が劇的に飛躍しています。「IT」という言葉からは、SNSやパソコンなどをイメージすることが多いかもしれませんが、本来は「Information Technology」の略語であり、情報技術・情報処理技術のことを指します。

参照:IT略語:ITの意味、本当に知ってる?

そして、人類の歴史を振り返ると、この情報技術が劇的に発展した際に、社会が大きく変化しております。一体どういうことでしょうか。ここでは3つの情報技術に注目してみたいと思います。

文字

文字は今から約5000年前、メソポタミア文明で発明されたと言われております(この地域で現存する最古の石板が発見されました)。その石板には、羊や動物、穀物などを表す象形文字と数字が記録されておりました。おそらく、土地や財産などの所有物の記録用に使われていたのでしょう。人類は文字の発明によって、数値や出来事、そして法律や感情なども正確に記録する力を得ました。また、文字の発明で私たちは、「歴史」を書き残せるようになりました。
参照:メソポタミアは古代文明発祥の地!メソポタミア文明の5つの特徴と歴史

活版印刷

活版印刷は15世紀にヨハネス・グーテンベルク(1937〜1468)によって発明されました。木版を使っての印刷技術は8世紀ごろすでに中国に存在しておりましたが、活版印刷は「文字の組み替え」が可能なため、印刷のコストが低くなりスピードも上がりました。「情報」の伝達速度やコスパが劇的に向上したのです。その結果、人類は自分が持っている情報(知識や思想)を多くの人に拡散したり、他人の情報に触れたりすることが容易になりました。そして、活版印刷の発明により、歴史は大きく変わることとなりました(宗教革命や科学革命、そして知識の民主化をもたらしたと言われております)。
参照:7 Ways the Printing Press Changed the World

IT革命

現代は「IT革命」の真っ只中です。IT革命には様々な定義がありますが、発端は「コンピュータやインターネットの発明」という理解で大丈夫です。皆さんもご存知の通り、IT革命によって「情報」を発信したり、受け取ったりするスピードやコストが飛躍的に変わりましたよね(例えばネット検索やSNS、スマホの普及等)。また、AIや仮想空間等の技術も、年々向上しております。そしてITの発展に伴い、今後も社会が大きく変化していくことが予想されております。

参照:10分でわかる情報科学:情報科学はなぜ重要なのか

上記動画はGoogleさんが提供しており、情報科学を学ぶことの大切さを解説しております。お時間があれば、ぜひ見てみてください(10分ほどで見れます)!

現代の情報技術は、今後も加速度的に発展していくように思えます。そんな時代において、私たちができることは何でしょうか。先行きが予想不能に思える状態の中、自分の夢や願望に近づくためには何ができるのでしょうか。

その一つの強力な方法が、「情報教育」を通して現代の変化を理解したり、今後の方向性を感じ取ることだと思います。自身の職業に関わらず、万人がIT革命に起因する社会変化の影響を受けます。そんなとき、その変化の性質や、変化の方向性に対する理解は、自分の人生のコンパスのような道標になってくれるのではないでしょうか。

何を学べのが情報教育なの?

一口に情報教育と言っても、定義やアプローチが多すぎる気がしますよね。ここではイングランドの情報教育をご紹介します。各国の情報教育について調べる中で、個人的にはイングランドのアプローチや学習ゴールが分かりやすく、体系が整理されていると感じております。

National curriculum in England: computing programmes of studyを引用しながら、イングランドの情報教育の内容を確認していきましょう。

まず、イングランドの情報教育は「Computing」という科目に集約されております(2014年に制定されました)。以下が「Computing」教育を通して目指しているゴールです。

A high-quality computing education equips pupils to use computational thinking and creativity to understand and change the world.

「Computing」教育を通して、生徒が世の中を理解し変えていくために必要な”computational thinking”と創造力を養う。

イングランド政府はカリキュラム概要にて、「Computing」の根幹にはコンピュータ・サイエンスという学問があると捉えています。具体的には、情報やコンピュータの原理、デジタルシステムの仕組み、そしてプログラミングを通しての知識の実践的な活用、です。コンピュータ・サイエンスという言葉はあまり聞き馴染みがないかもしれませんが、コンピュータの原理や活用方法を全般的に学ぶ学問のことです。

コンピュータ・サイエンスの知識を土台に、「Computing」教育が伸ばそうとしている具体的な能力は2つあります。それぞれ見ていきましょう。

ITの活用

プログラム作成やシステム構築、その他様々なコンテンツを作成するためのIT(information technology)を活用できる。

デジタル・リテラシーの習得

ITなどのテクノロジーを通して、自己表現や考えを深めたり、デジタルツールを使いこなすためのデジタル・リテラシーを習得する。

少しまとめると、「Computing」教育は社会をより深く理解したり、変えていく力を養うことを目指しております。その手段として、コンピュータ・サイエンスの教養を土台に、ITを活用する力やデジタル・リテラシーの習得を掲げております。それら2つの能力が、未来のデジタル社会を生きるために必要だと考えられているからです。

「Computing」教育のゴールである、”世の中を理解したり変えていく力を身につける”ですが、「未来を切り開く力」と言い換えることも可能だと思います。そのためには、まずはコンピュータに対する理解を深めることが大切である。そのようなメッセージを発している教育方針なのではないでしょうか。

この教育概要は、学校に通っている生徒を対象に構想されておりますが、根幹にある考え方はどの年代にとってもすごく有益だと思います。ITスキルの習得や理解の必要性が叫ばれるようになってから久しいですが、現在の社会変化の原動力は「情報技術の革新」であり、その革新を支えているのが「コンピュータ」です。そのため、「コンピュータ」に対する理解を深めることで「今」を知ることができ、「自由」に生きるための方法が見えてくる

「情報教育」はそんな可能性を持っているのではないでしょうか。

まとめ

本日はなぜ「情報教育」と向き合った方がいいのかについてお送りしました。

目まぐるしく変化する現代社会。その原動力の一つが、ITと呼ばれる情報技術の飛躍です。そのITを支えている「コンピュータ」が現代社会を形作っている、と捉えてもいいのかもしれません。そうであるなら、「コンピュータ」について深く知ることで、現在や未来を理解することができるようになり、「自由」に生きる方法が見えてくる。

「情報教育」を通して「自由」を手に入れる。「メタザル」は、その過程をお届けするためのブログかもしれない、と感じ始めている次第です。

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