日本の貧困問題。政府が2010年まで隠蔽してたって本当?

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ここ最近、日本が貧しくなったというニュースを連日のように見かけるようになりました。

確かに、実際にデータを見ると、日本の(相対的)貧困率はOECDに加盟している先進国で最も高いという結果が出ています。


Source: 2021年度のOECDデータ参照

また、日本政府のデータを参照した場合も、貧困率が1990年代から上昇していることが確認できます。


Source: II 各種世帯の所得等の状況

一般的には、昨今の日本の貧困問題は、新型コロナウィルスや急激な円高が大きく影響しているように感じるかもしれません。しかし、実際にデータを見ると、日本の貧困問題はパンデミックの前から長らく存在していることが分かります。

また、2010年のNYタイムズの記事は、日本政府は1998年から貧困の統計を秘密裏に行っていたものの、問題があることを否定してきたと報じています。つまり、日本政府は貧困問題が存在することを把握していたが、その情報を公には公開せず、正面から向き合っていなかった可能性があります。

※当時の首相であった鳩山由紀夫氏(民主党)が情報公開を推進した結果、統計を秘密裏に取っていたことが判明しました。

目次

一時的に盛り上がった貧困対策

民主党政権の下、「貧困」は大きなテーマとして扱われた時期もありました。

しかし、2012年ごろから、「生活保護バッシング」等がブームとなり、貧困のセーフティーネットである社会福祉が攻撃の対象となりました。

その後、2012年末〜2020年9月まで、「アベノミクス」と呼ばれる経済政策が、安倍政権の下で長らく実施されることとなります。

7年間アベノミクスが実施された結果

「アベノミクス」は日本の実質国内総生産(GDP)成長率を年率2%に回復させることを目指していました。

確かに、安倍政権発足当初は、GDPが年率3.2%で上昇している時期もありました。しかし、2014年〜2019年末(コロナ前)にかけては、GDPの成長率は年率0.2%でした。また、政権発足当初のGDP成長率は、アベノミクスの影響というよりも、シンプルな経済的なサイクルによるものだったと考えられています。

また、アベノミクス下での正規労働者の実質的な時給は5%ほど低下しました。加えて、増加した雇用の82%が非正規雇用だったことも分かっています。

2020年時点での、各労働形態における時給は、以下の通りでした。

正規雇用:2,500円
派遣社員:1,660円
パートタイム:1,050円

さらに、国民所得を国民から企業へ移す政策も実施され続けました。企業の最高所得税は38%から30%に引き下げられたものの、消費税は10%に倍増しています。


Source: Abe Left Japan’s Economy Worse Than He Found It

では、企業に移された「所得」は賃金に反映されたのでしょうか?

アベノミクスは労働者の所得をグローバル企業に移した?

岸田新首相の「新資本主義」懇談会で示されたデータによれば、2000年から2020年の間に、日本の数千の大企業の年間利益はほぼ倍増しました。しかし、全労働者への報酬は0.4%減、設備投資は5.3%減となっていることが判明しています。

また、アベノミクス時代に物価上昇したカテゴリーの約9割は、食料、エネルギー、衣料、履物などの輸入関連製品が占めています。

輸入品の価格が上がった一因は、当時の安倍政権が円安を推進したためだと考えられています。結果的に、日本の消費者の所得は、海外のグローバル企業と、日本の多国籍大企業に移っていく仕組みが出来上がりました。

今後の展望

ロイター通信によると、岸田首相に近い人物は、「首相とその側近は財政・金融政策の正常化に向けて動き、10年近く前に始まったアベノミクスの実験を徐々に縮小させたい」と考えているそうです。

自民党の小会派に属する岸田氏は、大規模な景気刺激策を維持し、4月にリフレ派のハト派を次期日銀総裁に選ぶよう安倍首相とその支持者から圧力を受けていたようです。

しかし、仮に自民党内のパワーバランスが変わると、大規模な政府支出や超低金利の中央銀行政策を支持する人々の影響力も低下します。その結果、今後の日本の景気政策は「アベノミクス」とは別路線で進む可能性があります。

Source:
日本における貧困の実態
6人に1人が相対的貧困に直面する日本の実情とは
Abe Left Japan’s Economy Worse Than He Found It

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