ユング心理学から学ぶ「男の原型」とは?!King Warrior Magician Loverの紹介!
現代社会は、人々の価値観が大きく、急速に変化している時代です。
その過程で多くの男性が変化に対応しきれずに混乱したり、孤独感が強まるという現象も発生しているようです。
その原因は、旧来の「男らしさ」が否定されたり、これまでは黙認されていた「特権」が(当然ですが)許されなくなっていることも影響していると思います。また、価値観の変化に伴い、人生の「目的意識」や「ゴール」を見失っている男性が増えていると言われています。
長期的なデータによると、男性は賃金や教育、労働スキルなどのあらゆる分野で、そのスコアが低下しているという結果も報告されています。
その一方で「マノスフィア」と呼ばれるオンライン上の男性グループが盛り上がっており、自己啓発やアンチ・フェミニズムなど、様々な男性運動(ポジティブ、ネガティブ含む)が活発になりつつあります。
いずれにせよ、現代は多くの男性が生きる道標を失っている気配が強く漂っています。
そんな倦怠感を打ち破るきっかけになる可能性のある本が「King Warrior Magician Lover(王、戦士、魔術師、愛人、通称KWML)」です。この本はユング心理学に基づいて、男らしさの「4つの原型」と、男らしさを育むためには「原型を統合」する必要があると説いています。
この記事では、KWMLの「4つの原型」と「それぞれの役割」についてご紹介します。
KWMLは、本当の男らしさとは、愛と理性に満ちたバランスが取れた人格であると教えてくれる本です。
目次
ユング心理学とは?
KWMLの著者は、ユング心理学者であるRobert Moore(ロバート・ムーア)氏です。
ユング心理学とは、カール・ユングの考えがもとになっています。ユングは現代心理学の巨匠の一人です(例えば、内向性・外交性などはユング心理学に基づいています)。
ユングは、人間の中には「集合的な無意識」が存在すると考えていました。
「集合的な無意識」とは、人類がこれまでの進化の過程で培ってきた本能的な思考パターンのようなものです。ユングはこれらの無意識の構成要素を「アーキタイプ(原型)」と呼び、すべての人類に共通で備わっていると考えました。
KWMLの著者であるムーア氏が定義する「男らしさ(男性心理)」は、この「原型」の概念に基づいています。つまり、「男らしさ」は4つの「原型」から成り立っているという考え方です。また、男性が問題行動(倦怠感や虚無感、過剰な暴力行為)を起こすのは、これらの「原型」が未発達だったり、繋がりを失っているからだと述べました。
ムーア氏によると、男性心理は4つの主要な原型から構成されています。その4つとは「王」「戦士」「魔術師」「愛人」です。
そして、男性が成熟した男性的な強さやエネルギーを獲得するためには、これら4つの原型に触れなければならないと主張しました。
では、それぞれの原型には、どのような特徴があるのでしょうか。
各原型の前提となる考え方
各原型の詳細の前に、ムーア氏の原型に対する考え方をご紹介します。
それぞれの原型は3つの要素で成り立っています。その原型の完全体と、原型の機能不全体2つ(原型の影と表現される)です。
例えば、「王」の原型は、王・暴君・弱王の3要素があり、以下の三角形のように表現されます。
Source: https://www.artofmanliness.com/character/behavior/king-warrior-magician-lover-introduction/
各原型の影は、原型のネガティブ面です。
これらの影は、原型が完全に統合されていないとき、あるいは原型が他の原型を犠牲にして過剰に表現されたときに、出現します。
例えば、「王」の影は「暴君」や「弱王」として現れます。
※この記事では、原型の完全体のみ取り扱います。
KWMLは、成熟した男らしさを身につけるためには、これらの影を認識し、統合することが重要であると主張します。
影と向き合い、統合することで、男性は自分自身の限界を自覚し、よりポジティブな方向にエネルギーを向けることができるようになるからです。
また、各原型には「成熟版」と「未熟版」が存在します。
「未熟版」の原型は、「成熟版」の不完全なバージョンだと捉えられています。
例えば、未熟な王は利己的で暴力的です。
KWMLは、多くの男性が「未熟版」の原型に留まっていることが、多くの問題を生み出すと主張しています。
そして、原型が未熟であることと向き合い、統合することで、よりバランスが取れた男性に発達できると考えています。また、この統合プロセスは、多くの時間や努力、そして内省が必要だと説いています。
人格の発達には、意識的で継続的な努力が必要だという考え方は、KWMLが教えてくれるメッセージの中で、一番大切かもしれません。
原型①:王
王には、以下の特徴があります。
・中心的
・決断力がある
・誠実
・守護的
・供給的
王は、主導権や決断力、他者を導く能力、そして人々を保護し(必要なものを)提供する能力を表現します。勇気、知恵、誠実さ、公正さなどの資質と関連しており、人の行動と決断を導く「内なる権威」と認識されています。
王の特徴は、その責任と管理能力にあります。例えば、王は自分の行動と他人の幸福に責任を持ち、コミュニティの公僕として行動します。
また、目的意識と方向性を持っており、目標設定や、その目標を達成するための行動力も合わせ持っています。そして、全体像を把握し、コミュニティ全体に利益をもたらす戦略的な決断を下すことができます。
成熟した王は、自分の欲求と、自分が責任を負うべき人々の欲求とのバランスをとることができます。そのため、王は決して支配や専制する能力ではなく、リーダーシップや奉仕のために働く原型です。
原型②:戦士
戦士には、以下の特徴があります。
・正義のための戦闘力
・勇気、規律、決意
・困難の克服
・リスクを取る能力
・集中力
戦士は、正しいことのために戦う能力や、自分と他人を守る能力を表現します。また、勇気、強さ、規律、決断力などの資質と深く関連しています。
戦士は、肉体的、心理的な困難を克服したり、危険を冒し、人生に積極的に参加する能力でもあります。
未熟な戦士は暴力的で攻撃的かもしれませんが、成熟した戦士は、勇気・決意と、思いやり・知恵・自制心とのバランスを取ることができます。
原型③:魔術師
魔術師には、以下の特徴があります。
・深い知識とスキル
・未来を見通す能力
・コミュニケーション力
魔術師は、創造性・直感・変容などの資質と関連しており、創造的な精神や想像力を働かせる能力、そして物事の表面的な部分だけでなく、その先を見通す能力を表しています。
魔術師は、世界の潜在的なパターンやつながりを理解し、その知識を使ってポジティブな変化をもたらす能力を持っています。
また、コミュニケーション能力と他者とつながる能力も高く、インスピレーションを与えたり、説得したりすることで、現実を変えていく力があります。
完全体の魔術師は、人を操ったり騙したりするのではなく、知識と理解を用いて人を助け、世の中をポジティブに変化させることに能力を使います。
原型④:愛人
愛人には、以下の特徴があります。
・美を感じることができる
・他者と繋がれる
・情熱的で、人生を楽しもうとしている
愛人は、情熱、共感、感情的な知性などの資質と関連しており、人を愛し、人とつながり、美を感じ、人生を楽しむ能力を表現しています。
愛人は、他者と健全な人間関係を築いたり、維持したり、親密になることができます。また、他者に対して開放的かつ受容的で、世界の美しさを理解する能力も持っています。
未熟な愛人は、快楽に溺れたり、自己中心的になりがちですが、成熟した愛人は、自己認識、共感、尊重をもって人を愛し、人とつながる際に生じる感情のバランスをとることができます。
4つの原型が統合されている状態とは?
KWMLは、4つの原型が「統合」されているときに、私たちの人格が成熟すると考えています。
では、「統合」とはどういう状態でしょうか?
ムーア氏によると、統合の核となるのが王の原型です。
王はリーダーシップを発揮することで、他の原型の基礎となります。
戦士は、行動を起こし、困難を克服することで、王の行動力になります。
魔術師は、創造力、変化を生み出す能力、無意識にアクセスする能力を使って、王の創造力となります。
愛人は、愛すること、つながること、美しさを理解することで、王の感情を表現します。
成熟した人間は、これらの原型が調和的に機能して、戦士が行動力と決意で、魔術師が創造性と変化をもたらす能力で、そして愛人が感情的知性や美を理解する感受性で、王の方向性と目的を達成することに貢献します。
Source:
King, Warrior, Magician, Lover: The 4 Archetypes of Masculinity
The Four Archetypes of the Mature Masculine: Introduction
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