自己催眠(Self-Hypnosis)って本当に効果があるの?

自己催眠とは、自分自身を高度に集中させて、暗示にかかりやすい状態に置くことを意味します。本や映画に没頭している時間や瞑想中、似ている状態かもしれません。

催眠は怪しいものだと考えている人もいますが、今日では自己催眠は幅広く使われている(補完的な)医療技術の一つとなっています。実際に自己催眠は、ストレスや睡眠障害、喫煙などの依存症に対応する方法として、幅広く取り入れられているようです。

この記事では、自己催眠の概要や科学的な研究をご紹介します。

目次

自己催眠の概要

自己催眠は、リラクゼーション・視覚化・暗示など、様々なテクニックによって作り出される「自然な心の状態」です。深いリラクゼーションと集中力により、思考や行動、習慣などを変化させることができる可能性が生まれます。

自己催眠の歴史は、古代文明にまでさかのぼります。当時から自己催眠は、精神的、治療的な目的で使用されていたようです。また、19世紀にはスコットランドの医師ジェームス・ブレイド博士が、「催眠」という言葉を作り、治療ツールとして使い始めました。

それ以来、自己催眠は心理学の分野で人気を博し、不安、恐怖症、不眠症、依存症など様々な症状の治療に用いられています。

自己催眠中の脳内は何が起きている?

催眠中は以下の3つの脳内ネットワークが大きく関連しています。

・サリエンスネットワーク(SN)
受け取る情報を監視して、その情報の重要度を決定する役割を担っています。

・エグゼクティブ・コントロール・ネットワーク(ECN)
問題解決、推論、ワーキングメモリなど、より複雑な認知能力を管理する役割を担っています。

・デフォルトモードネットワーク(DMN)
脳が「今の瞬間」に集中していない時(ボーっとしている時など)に最も活性化されます。


Source: What Happens in the Brain during Hypnosis?

一般的に催眠中は、脳が情報の監視を減らすため、SNの活動量は減ります。そのため、脳が暗示などにより集中できるようになります。

ECNは、催眠によって強調しようとする変化に応じて、活動が変わります。催眠にかかりやすい脳は、SNとECN間の結びつきが強く、SNがECNの活動に影響を与えやすくなっていると考えられています。

さらに、催眠中はECNとDMNの機能的なつながりが弱くなります。その結果、脳は(自分が)与えている暗示により集中します。そして、「暗示」をより受け入れやすい状態になります。

催眠中の脳の活動がどのように変化するかは、催眠術を使う目的によって異なります。

しかし、一般的に自己催眠は、感覚由来の情報の監視や管理を減らし、心の迷いを減らし、催眠セッション中に与えられた「暗示」に合うように脳内の考え方を変化させることで作用します。

どんな効果がある?

自己催眠は、多くの科学的な研究によって、様々な効果が得られることが示唆されています。下記にて、いくつかご紹介します。

睡眠の向上

2020年の研究によると、睡眠障害を抱えている90人の女性を対象に自己催眠を導入した結果、自己催眠は不眠症やその他の睡眠問題に対して効果的である可能性が示されました。

研究の参加者は、自己催眠後に以下の項目が改善したと報告しています。

・睡眠時間
・睡眠の質
・気分の浮き沈み

Source: Self-Hypnosis for Sleep Disturbances in Menopausal Women

体重の減量

2021年のレビュー論文では、自己催眠と減量に関する11個の研究が評価されました。その結果、9つの研究にて、催眠が体重減少につながる可能性を示していることが分かりました。

レビューの著者によると、催眠とマインドフルネスは、以下の点で体重減少に役立つ可能性があると述べています。

・食事中の、食べ物に対する意識を高める
・自身のボディ・イメージをポジティブに受け入れる
・(ストレスや感情などに対して)反応的に食べることを制限する

また、催眠療法は、食事の改善や運動と組み合わせた場合に、減量に最も効果があるようです。

Source: Can hypnosis help with weight loss?

痛みの管理

2016年に行われた研究では、慢性的な痛みを経験している53人の入院中の高齢者を対象に、催眠術と自己催眠の効果が調べられました。

研究者たちは患者を2つのグループに分け、一方のグループはマッサージを受け、もう一方は3回の催眠セッションを受けました。また、患者たちは訓練を受けた医師から自己催眠を学び、痛みを緩和するために自己催眠を実践するように勧められました。

その結果、入院中の痛みの緩和には、マッサージよりも催眠の方が有効であることが示唆された。また、催眠は気分を高揚させる効果もある可能性があることが示されました。

Source: Hypnosis can reduce pain in hospitalized older patients: a randomized controlled study

自己催眠のやり方

以下が、自己催眠の一般的な実施方法です。

リラックスできる場所でくつろぐ

まず、身体的に快適な場所を見つけます。また、窮屈な服装や事前の大食いは避けます。

催眠を誘導する

一例ですが、漸進的筋弛緩法という手法で、催眠状態に入ります。

これは、体の一部に蓄積された緊張に意識を集中し、順次緊張を解いていくものです。手と腕から始めて、背中、肩、首、そしてお腹と胸、足と足へと移動していきます。緊張が溶けていく様子や蒸発していく様子をイメージしたり、ゆっくりと筋肉を緊張させてから弛緩させたりします。

この手法によって得られるリラックス感は、自己催眠を開始するための出発点となります。

暗示を導入する

集中してリラックスした状態で、自分に暗示を与えます。

自己暗示例ですが、催眠後に改善したいことや、考え方を変えたいことをシンプルな文章にして、自分に提案することができます。一般的な提案文としては、以下のようなものがあります。

・自信と自尊心を向上させる
・不安を克服する
・禁煙する
・よく眠れるようになる
・1日3食、健康的な食事をする
・私は落ち着いており、自信があり、リラックスしている

通常の感覚に戻る

暗示を行った後、「目を覚ましている」と自分に言い聞かせながら、5つまで数えます。そうすることで、より注意力を高め、意識を高めることができます。

5つ数えたら、目を開けて手足を伸ばし、通常の生活に戻ります。

Source:
On the Brain’s Activity during Hypnosis
Yes, Self-Hypnosis Can Really Work — Here’s How to Give It a Try
Self-Hypnosis: What It Is & How to Do It

シェアする