自己啓発本を読まないメタザルがネヴィル・ゴダードをおすすめする理由

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「自己啓発本を読むのはもう止めよう。」

ふと、そんなことを思ったことはありませんか? スローライフやアンチワークの盛り上がり等、脱「自己啓発」の動きが強くなっているような気がします。最近は、危うく一生懸命生きるところだった(ハ・ワン著)のような本も大きな共感を呼んでおりましたね。

2022年現在、これまでに出版された自己啓発本は星の数ほどにもあります。もういい加減読むのを止めよう、という意見には100%共感できます。そんな私も、最近は自己啓発書を”ほとんど”読まなくなりました。

しかし先日、めちゃくちゃ内容が濃いものに出会ってしまいました。「Feeling is the Secret」という本です。今から約80年以上も前に書かれております。

「Feeling is the Secret」には、全ての自己啓発本の「源流」とも呼べるような概念や考え方が詰まっていました。これさえ読めば、もう新しい自己啓発書は読まなくてもいい。本気でそう思えるほど、自己啓発のエッセンスが書かれている究極の本だと感じました。ページ数も少なく、1時間ほどで読めます。

自己啓発書を読むのを止めようと思っている人向けに、あえて最後に一冊だけ読むことを提案したい。それくらい、内容や作者に魅力があると感じました。今日はそんなコンセプトのもと、「Feeling is the Secret」という本についてお送りします。

目次

どんな本なの?


参照:Feeling is the Secret: Deluxe Edition

「Feeling is the Secret」とは、1944年に Neville Goddard(ネヴィル・ゴダード)によって書かれた本です。

和訳もされており、タイトルは「もう君はそこにいる!」です。英語のタイトルの方が好きなので、今回は「Feeling is the Secret」として、ご紹介させてください。

一旦、簡単な概要説明を見てみましょう。

引き寄せのカリスマ作家、奥平亜美衣さん、絶賛の書!

ネヴィルが本書の冒頭でも述べているように、奇跡を起こすカギは「感情」にある。あなたの夢が現実化するかしないか、その決め手になるのは、いつだって「感情(気分・波動)」なのである。
『どの気分にするか選択する自由』が自分にあると気づいた人から、自分の人生を望むように変えていける。

本書の特筆すべきところは、ただ、個人の願いを叶えるというところにとどまらず、さらにその先にある人生の目的や使命にまで言及している点である。

引用元:Feeling is the Secret もう君はそこにいる! 思いどおりに書き換えた「その一日」があなたの未来になる

「引き寄せの法則」や「波動」など、多くのパワーワードが出てきますね。何だか怪しい、胡散臭い。。。そう思い、この時点で読むのをためらってしまう方は多い気がします。その気持ちはすごく理解できます。

多くの自己啓発やスピリチュアル系の本は、派手な言葉やメッセージを前面に押し出して宣伝されていますよね。「〇〇の法則」や「成功」などの言葉が、大きく帯に印刷されています。ですが、中には豊かな歴史や思想が含まれているものもあります。「Feeling is the Secret」も、そのような本です。

そのため、少し回り道になってしまいますが、この本が書かれた時代的な背景や、著者の紹介を行わせてください。ここでは一旦、「Feeling is the Secret」とは、”感情が人生の結果を左右する” という内容の本だと捉えてください。

著者のネヴィルってどんな人?


参照:Neville Lancelot Goddard

著者のネヴィルは、イギリス生まれのアメリカ人です。17歳で渡米し、10年ほど舞台俳優やダンサーとして活動しました。俳優業の一環でイギリスに行った際、「精神の力」に関する本に出会い、強く興味を持ちました。そして帰国後、俳優業から引退して「精神世界」の研究に没頭するようになりました。

そんな中、ネヴィルは「心の師匠」とも言える人と出会います。エチオピア系ユダヤ人、アブドルです。彼は、従来の教えとはかけ離れた「キリスト教」を教えていました。密教的・神秘的なキリスト教、といったところでしょうか。そんなアブドルのもとで、ネヴィルはヘブライ語や聖書の「隠された意味」を7年間学びました。

ネヴィルの思想の根幹には、ユニークなキリスト教の解釈があります。当時(もしかしたら現在も)では異端的な考え方でしたが、彼は人間の「想像力」こそが「神」であると考えておりました。そして、聖書が歴史的事実に即したものではなく、人間が自己実現するための方法論が比喩的に書かれている書物だと解釈しておりました。つまり、ネヴィルはいわゆる「絶対的な神」の存在を信じておらず、私たちの「想像力」が神の力に等しく、「現実」を形作る原動力だと考えていたのです。

少し宗教的な話になってしまいますが、ネヴィルの思想に関しては2つのポイントがあることを覚えておいてください!

・独特な方法でキリスト教を解釈していた。
・人間の「想像力」こそが、「現実」を作っていると考えていた。

異端的キリスト教? ニューソートの概要

人間の想像力や精神が「現実」を作ると考えていたネヴィルですが、このような思想の源流は「New Thought Movement(ニューソート・ムーブメント)」に見ることができます。

ニューソートとは、19世紀ごろにアメリカで勃興した思想ムーブメントです。ニューソートの主旨をシンプルにまとめると、「思考の力でより良い人生を生きる」ことを目指していました。ここでは詳細を割愛しますが、思考の力で病気を治癒したり、金銭的に成功したり、保守的な宗教による束縛から自由になるために活用されていたようです。

ニューソートは、個人の「思考や精神」と、「人生の成功」を結びつけるため、前向きに考えることと相性が良さそうですよね? 当初は宗教や医療的な側面が強かったニューソートですが、徐々にビジネスや成功哲学の分野で多様されるようになりました。そして1950年代に、ノーマン・V・ピールの提唱をきっかけに、「ポジティヴ・シンキング」が爆発的に流行しました。

このニューソートの歴史については、cocoblo.net さんが【よくわかる】ニューソートって何?意味と内容を詳しく!【前編】(後編もあります)にてまとめてくださっているので、ぜひ読んでみてください!

ネヴィルは特段、自身の思想を「ニューソート」と関連づけてはおりませんでしたが、人生において「精神」が中心的な役割を果たすという世界観は、ニューソートのそれとかなり近しいものがあるのではないでしょうか。

いずれにせよ、現代の「自己啓発」の源流は19世紀のアメリカから発生した「ニューソート・ムーブメント」にありそうです。そして広義には、ネヴィルの思想とニューソートには共通点が多くあります。

ネヴィルの世界観

著者であるネヴィルと、当時の思想背景を踏まえた上で、いよいよ「The Feeling is the Secret」の内容に入っていきましょう。

ネヴィルにとって、「人間の想像力」が「神」そのものでしたよね? そのため、私たちの「精神」が「現実」を作っているということになります。別の言い方をすると、私たちの「意識」が現実世界に現れているということです。

ネヴィルは以下のようなメカニズムで、「意識」が「現実」を作り出すと考えました。

「意識」は単独では存在しておらず、「無意識」とパートナーシップの関係にあります。私たちの「意識」が想像や考えを作り出したり、選択します。「意識」は「感情」を通して思考を「無意識」に受け渡します。そして、それらのインプットを受け取った「無意識」が「現実」を作り出します。

いかがでしょうか。シンプルながらも、「自己啓発」の本質を突いている気がします。現代では広く普及している「引き寄せの法則」なども、ネヴィルの考え方に影響されていそうですよね。

ここで1点注意しなければならないのが、「無意識は全てを受け入れる」という点です。良い感情も悪い感情も区別なく受容して、その実現に向けて動いてしまうのです。また、ある感情を打ち消すためには、それよりも「強力な感情」を持つ必要があります。

「強力な感情」とは、「実際に感じている感情」です。例えば、「健康なときの感情」は「健康になりたいという感情」に勝ります。今実際に感じているものが、感じたいと思っているものより、常に優先されてしまうのです(ということは、「引き寄せの法則」って「〇〇したい」と念じているので、逆効果なのでしょうか、、)。

では、実際に感じている「現実」が「願望」を打ち消してしまうのであれば、私たちは意識の力をどう使ったらいいのか。ネヴィルによると、私たちは「既に願望が実現している状態にある」と考えるべきだと言います。つまり、「〇〇をしたい」という感情ではなく、「既に〇〇である」際の感情を持とう、ということです。そして、この「感情」のコントロールこそが、実りある人生を送るための秘訣だと説いています。

少しまとめると、ネヴィルの理論は以下の通りです。

「無意識」が「意識」から感情を受け取り、現実を作り出す。

「願望」を叶えるためには、感情面においてその「願望」が既に叶っているという「事実」を先に作り出す必要がある。

「無意識」がその「事実」を受容して、「現実」を作り出す。

かなり刺激的な思想にも見えますが、意外と違和感を感じないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際に私も、「精神」や「感情コントロール」が人生に大きな影響を与えていると感じています。特に、「感情」が人生の選択や決断力に大きな影響を及ぼしているというのは、多くの方が感じているかと思います。また、過去を振り返った時に、不思議と当時の願望が今は叶っていると気付く時もあるのではないでしょうか。

さて、この「Feeling is the Secret」を書いたネヴィルですが、存命中は全米を回りながら講演を行っておりました。それらの講演は無料で開催され、参加者が録音することも許可しておりました。ネヴィルが講演で良く言っていた言葉が「Test It」でした。「今夜家に帰ったら、自分が心から望むことを思い浮かべ、テストしてください。」講演会では、観客にそう訴えかけていたそうです。

現代において、ネヴィルの理論を支える科学的な根拠は恐らくないでしょう(感情が脳に与える影響に関しては、研究成果が多く出ています)。しかし、ネヴィル自身も直感的に自分の理論を捉えていたのだと思います。なぜならば、彼はこんな言葉を残しているからです。

「いずれ科学者がこの世界の仕組みを解明してくれるが、それまでは、どのようにその仕組みを使うかのほうが大切だ。」

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